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楽譜浄書ソフトとは?

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『楽譜浄書ソフトについて』

ワープロの登場は、小説家などの執筆活動に少なからぬ変化をもたらしました。それは、小説家ではない我々にとっても(現在の電子メール文化を挙げるまでもなく)大きな出来事です。ほぼ完全に横書きが主流となり、私が今使ったような「()」記号なども文中で頻繁に使用されるようになりました。

ワープロによる筆記を手書きと比べた特徴としては、
 ・タイプに習熟すると、より速く文書を作成出来る。
 ・コピー/ペースト機能により文章の推敲・変更作業がより簡便に行える。
 ・字の上手へたが無い。
といった点が挙げられるでしょうか。これはもちろん「だから優れている」と一概に言えるものではなく、暖かみなど手書きに比べ失うものが多いとの批判も存在します。

楽譜浄書ソフトは、ワープロソフトと同じく、キーボードやUSBで接続した鍵盤を使い、楽譜を「打つ」ことの出来るソフトです。(左が手書き、右が楽譜浄書ソフトによる楽譜)

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御覧のように、同じ旋律を見比べれば楽譜浄書ソフトで書いた(打った)楽譜の方が圧倒的に見やすい事は明らかです。ワープロと同じく、コピー&ペーストが可能ですし、習熟すれば手書きより早くきれいに楽譜を仕上げられます。

音の高さを1曲丸ごと変更する「移調」という作業や、複数の楽器による演奏(つまり合奏)の楽譜から、特定の楽器だけを抜き出した新たな楽譜(=パート譜)を作る事も容易です。「移調」を手書きでやろうとすれば、全ての音符の高さを変えながら丸ごと別の五線紙に書き写さなければなりませんし、後者の作業では、5重奏や12重奏の楽譜から一つずつのパートを書き出さなければならない訳ですから、楽譜浄書ソフトの威力は明らかです。

また、音を出せるという点も優れています。楽譜に入力された音を実際に演奏する事(かなり陳腐な演奏ではありますが)が可能で、これが「校正作業」に絶大な効力を発揮します。文章にしろ計算書類にしろ、およそ人の書いたものに間違いはつきもので、長大な書類からそうした間違いを撲滅する事は大変な作業です。自身で書いたものを自身で見直すならなおさらでしょう。楽譜にしてもそうした事情は同じです。しかし楽譜を「聞ける」ことにより、何度見直しても見つからなかった間違いが「あれ?今の所おかしいぞ」と明らかになるのです。


一方で、いい事ばかりではありません。同じ人の書く文章でも、手書きとワープロとでその文体まで変わる場合が指摘されますが、同様の視点から楽譜浄書ソフトの弊害/功罪が指摘される事があります。こればかりは人によりまちまちでしょうが、「何を使い書くか」という道具の問題が文章以上に顕在化しやすい側面はあるようです。ラヴェルという作曲家は、晩年脳を患い「頭の中で音楽を創作できているのに、それを楽譜に書けない」という不思議な状態に陥ったと言われています。興味深い話です。作曲家が音響や旋律を頭の中で鳴らしながら楽譜を書く時、脳や心はどう働いているのでしょうか。

楽譜の「見た目」の違いもしばしば話題となります。楽譜を書く事と同様、読む事もまた複雑な脳の働きを伴います。音楽家は楽譜に対し「理性」と「感性」の両方をもって対峙すると言えるでしょう。演奏を行う時、楽譜はある種の「絵」となります。ルノアールを見て人の感性が反応するような、そんな化学反応が演奏家の脳の中で行われていると言えるかもしれません。楽譜は「理性にとっての読みやすさ、判読しやすさ」と「感性にとっての説得力」とが共存すべき、文書とはまた違った印刷物なのです。そういった高度なものを書くあるいは描くのに必要な要素が、楽譜浄書ソフトに完璧に備わっているかというと残念ながらそうではありません。

結論。とは言っても演奏家は、楽譜を読み、消化し、最終的にその曲を完全に自分のものとし、多くの場合に暗記し(暗譜し)演奏する訳ですから、楽譜云々という話は限定的なものです。また、仮に限界があるにせよ相当程度きれいな楽譜を仕上げるそのスピードは楽譜浄書ソフトの大きなアドバンテージです。しばしば若干の違和感を伴って語られる楽譜浄書ソフトですが、総合的に見ればやはり優れた道具と言う事が出来るでしょう。最後に日本で代表的な製品を列記します。(クリックするとメーカーの製品紹介ページへ飛びます)

Finale NotePad 2004(無料ダウンロード)
シベリウス 2(\70,000-,アカデミック版\48,000-:欧米で流行りのソフト)
フィナーレ 2004(\60,000前後,アカデミック版\48,000-:日本での標準的ソフト)
フィナーレアレグロ 2003(\24,800-,アカデミック版\14,800-:フィナーレの簡易版)

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